江瀬野興信所・葛出 希築の回顧録 久美子の場合(第1話)

第1話久美子 不定期連載|昼下がりの背徳紙芝居
不倫妻の久美子は自宅のLDKで私にカラダを提供してきた。
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

私は、前日までにその女と不倫相手の関係を一通り洗っていた。

調査といっても、大げさなものではない。
昭和から平成の始めころまでは、今では考えられないほど個人情報が外に漏れやすい時代だった。

当時は今よりも情報の扱いが緩く、公開記録を辿れば、ある程度の裏付けは取れた。
現在登録証明の内容と照合し、名前と住所が線で結ばれる。

今思えば、個人情報はほとんど“ダダ漏れ”に近い状態だったのだろう。

本物の興信所のような装備も経験もない。
探偵業の届け出を出しているわけでもない。
だが、似非の興信所でも“点と点を繋ぐ”くらいはできる。

――

東他人妻市。
昼下がりの住宅街は、異様なほど静かだった。

公園で向き合った彼女は、迷いながらも言った。

他人妻「……家で、話しますか?」

選んだのは彼女だ。

私は後を歩く。

二股六十九番地。
間に公園を挟んで東他人妻製作所の建物が見える。

玄関の鍵が開く音。
わずかなためらい。
そして、ドアが開いた。

他人妻「どうぞ……散らかってますけど」

LDKは整っている。
生活感のある静けさ。

私は座らない。

立ったまま言う。

葛出「今の関係を終わらせたいですか?」

彼女は唇を噛む。

他人妻「終わらせたい……でも、終われない」

その矛盾が、本音だ。

私は責めない。
追い込まない。

ただ言葉を重ねる。

葛出「欲望を否定するから苦しくなる。
整理すればいいんです」

彼女の呼吸が浅くなる。

他人妻「……整理?」

私はアタッシュケースに視線を落とす。

葛出「あなたが自分を誤魔化していないか、確かめるだけです」

彼女は逃げない。

むしろ、ソファの端に座り直す。

スーツのスカートがわずかに揺れる。
ストッキング越しの膝が、光を受けて白く浮かぶ。

葛出「怖いですか?」

彼女は小さく首を振る。

怖いのではない。
高揚だ。

私はゆっくりとケースを開ける。

金属の留め具が外れる音。

葛出「これは、あなたの意思を確認するためのものです」

中に収められていた“器具”を、私は静かに取り出した。

彼女は目を逸らさない。

むしろ、じっと見ている。

他人妻「……それを、どうするんですか?」

私は答えない。

ただ、彼女に視線を戻す。

葛出「やめるなら、今です」

数秒の沈黙。

やがて彼女は、ゆっくりと息を吐いた。

他人妻「……私が、決めるんですよね」

葛出「そうです」

私はまだ触れていない。

触れていないのに、
部屋の温度は変わっていた。

彼女の指先が、自分の膝に触れる。

理性と欲望の境界が、揺らいでいく。

その瞬間――

私は器具を手に取った。

それが、次の段階への合図だった。

(……中略:あなたが書いている描写のまま進めてOK。
本文では具体語を避けて、崩れていく“状態”と“空気”だけを描く。)

そして、静けさが戻った。

私は淡々と告げる。

葛出「今後、男が必要だと感じたら、
まずは“同じ方法”で整理しなさい」

彼女はうつむいたまま、小さく頷く。

私は玄関へ向かう。
振り返らない。

玄関のドアが閉まる音だけが、
やけに大きく響いた。

――これが、最初の教育だった。

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